Première étoile

舞台俳優のおたく

元推しの話

 

ものすごく久しぶりに元推しの事を思い出してセンチメンタルな気分になったから、行き場のないこの想いを捨て置きしてみようと思う。

当時の私には「推し」という概念はなくて、とあるグループに所属するメンバーの「ペン」だったから元推しと呼ぶのと少し違うかもしれない。

 

私は中学から高校にかけてKぽ界隈でおたくをしていた。

はじめはboy friend(以下ぼぷちゃん)という当時デビューしたてのグループのヨンミンペンだった。ぼぷちゃんは失恋ソングが非常に得意で、彼らの透き通った爽やかな歌声と切ない歌詞がベリーマッチしていて大好きだった。

時々いまでも冬の時期はネヨジャやI'll be thereを聞きながらこのクソ寒い風にあたり感傷に浸る自虐ごっこをよくする。(グループ名ボーイフレンドに対してファンクラブ名がベストフレンドだったのが決してお前らはガールフレンドではないと牽制されている気分でとても愉快だった。ちなみに日本のファンクラブは既に解散済み)

 

 

しかし、スーパージュニアが6thアルバム「Sexy,Free & Single」をリリースしてからは大成功イメチェンを果たしたブロンド王子の飴かぼちゃに一瞬にして心を奪われ、いつのまにか青色のペンライトを振るようになっていた。

 

そう、わたしはスーパージュニアのファン「えるぷ」でありイ・ソンミンのおたく「ミンペン」だった。

 

ソンミンさんは真面目で心優しくて、アイドルにしてはむちっとしているとても愛らしい人だった。

彼の繊細な心がよく映し出された、人の感情を揺さぶるその歌声がたまらなく好きだった。普段の声よりも高めで透き通るようなそれは美しくもどこか儚く、彼の歌声を聴いているとなぜか涙が出てしまう、そんなことがよくあった。

超個性的なメンバーが13人(M含め15人)もいる大所帯に属する彼は年齢がちょうどド真ん中の立ち位置だった。上のお兄さんにはじょうずに甘え、下の子たちの面倒はよく見る世話焼きだったためみんなから慕われる、周りを一歩後ろから微笑みを浮かべて見ているような物静かな人だった。

器用で歌もダンスも平均以上に何でもこなしてしまうけれどその反面、強いキャラ性や秀でた特徴がないことで悩んでいたりでなんだか放っておけない人だった。

 

 

ミンペンを始めてからは毎日が楽しかった。ペンカフェ*1がお恵みくださる大量の活動写真をアルバムに保存して、歌番組やバラエティ番組をいろんな所から引っ張ってきて観てみたり、言語をよく分かっていないくせに声が聞けるという理由でラジオを聴いてみたり、でも少しでも言葉を理解したくてNHK教育テレビで韓国語の勉強をしてみたり色んなことをした。思えば私がはじめて自分の意志で舞台のチケットを取ったのも、彼が主演をつとめた「ジャック・ザ・リッパー」というミュージカルだった。あれはめちゃくちゃ面白かった。

 

中学半ばまで完全な2次元おたくだった私が、ここまで3次元の人にぞっこんになるなんて正直思ってもいなかった。

 

寝ても覚めても彼のことばかり考えるような、そんな毎日だった。

 

 

ペンを始めて2年と少し経った時、彼の熱愛が報道された。

相手はミュージカルで共演した女優さんだった。報道直後は彼女がいたという事実が悲しくて夜な夜なベッドを涙で濡らした。

 

でももっと辛かったのは数多くの「匂わせ」が発覚した後だった。

「ファンからもらったぬいぐるみを彼女が持って写真を撮りSNSに投稿する」という匂わせ選手権殿堂入りの代表例はもちろん「歌番組で1位を受賞し、リーダーがお礼のコメントを述べている後ろでカメラ目線で彼女とのお揃いのネイルにキス」「自身のラジオで名前は伏せて彼女の誕生日を祝う」など割とぶっとんだ行為をしていた。

彼が匂わせをしているなんて信じたくなくて、はじめは彼女の悪い噂しか見ていなかった。とんでもねえ女に引っかかって可哀想にって思っていたけど実際そんなんじゃなくて。明らかに匂わせ行為は彼の方がえげつなかった。

熱愛報道対して沈黙を貫くくせに火に油を注ぐように彼女との日常を投稿し続ける彼の暴走は目に余るものがあった。匂わせをいやがるコメントを送ったファンをわざわざブロックした時は呆れてものも言えなかった。

 

それでもやっぱり自分の応援している人が有り得ないくらい炎上している様を見るのはファンとしてとても辛かった。

 

報道から1ヶ月後、彼らは結婚を発表。私は正直勢いについていけなかった。そしてこの時には悲しいとも思わなくなっていた。

たしかに最初は彼女がいる事に対して悲しかったけど、一人の男としてみんなに見せつけたくなるほど愛する人に出会えたのは幸せな事だし彼女ぐらいいたっていいじゃないかと開き直りつつあった。若干のりあこを拗らせていた私がそんな風に思うようになったのは彼に冷めてしまったからだった。

 

報道後初のSUPER SHOWで私は東京ドームアリーナ最前を自引することになる。こういう時に限って席運が良かったりする。あれだけ叩かれても以前と変わらず素晴らしいパフォーマンスをする彼を見て

「今彼は仕事してるんだ、アイドルって職業なんだ」

と思ってしまったし、目の前にきて嬉しいはずなのによく分からない感情がごちゃごちゃになって苦しくて泣いた。

自分はもうだめだって、もう推せそうにないってアリーナ最前トロッコ出入り口横という神席で気付いてしまった。とんだ皮肉だった。

 

彼は結婚後、逃げるかのように兵役に行ってしまった。スパショもひと段落しメンバーそれぞれが個々の活動に専念するようになった頃、私は徐々にスーパージュニアを追わなくなり、K-pop自体からも自然と離れていった。(代わりにFree!ESにハマり2次元おたくへと舞い戻ることになる)

 

 

私が高校を卒業し専門に入ってしばらく経った頃、気付いたら彼は除隊していた。

私が社会人になった時には、彼に対しスーパージュニアを脱退してほしいという除名運動が行われていた。彼が結婚してから3年近く経っているというのに、ファンの怒りは一向に収まっていなかった。

私はさすがに複雑だった。結婚している事実はもう変わらないのにいつまで彼を追いつめるんだろうと思ったし、同時になぜここまでファンから嫌われているのに辞めないんだろうとも思った。

除名運動が進んでいくうちに活動停止を余儀なくされ、彼は次のアルバムに参加しないと表明した。

 

ファンに望まれないとステージに立てないこの世界で、彼はファンによって居場所から引きずり降ろされたのだった。

 

除名運動が始まって1年半近く経つけれど、新宿に貼ってあるスーパージュニアの大きなポスターには彼の姿はまだない。

今年ソロ活動をはじめたみたいだけど、私はこのMVの再生ボタンを押せないでいる。というかもはや興味がない。

いつかみんなとまたスーパージュニアとして輝ける日が来るといいね。精神的に辛いだろうしいろいろと大変だろうけど奥さんいるんだし家族守るためにも頑張って。

 

私がなにを言いたいかっていうと、推しとファンの関係って大事だし、切っても切れないものだってこと。あとSNSはマジで曲者ってこと。

 

「今日の味方は明日の敵」みたいな現場を目の当たりにした者として、ファンと推し双方が思いやりをもって接する事がどれだけ重要な事なのか伝えたい。推し個人の幸せがある事だってもちろん人間だもの、分かってる。でも伝え方が良くなかったりコミュニケーションの壁を作って逃げたり、ファンを蔑ろにしちゃ話は変わる。

推しとファンは信用と信頼でその関係が成り立つわけだから、お互いに声をかけあっていこう。ブログだって書いてくれる事自体ありがたいし、ニコ生でお仕事とか近況報告とかなんでもいいから話してくれたら嬉しい。舞台の感想とか身体を気遣うお手紙もリプも実際に送らなきゃ伝わらないから発信するって大事。

あと匂わせは何があってもしちゃいけないよ。

 

最後にソンミンさんの一連の事件ですが、一応色々調べましたがずいぶん長い間封印していた記憶なので時系列が前後しているかもしれません。ファンの方には大変失礼な事と存じますが、古のえるぷの戯言と大目に見て頂けると幸いです。

 

みんな推しのこと大切にしましょう。そして推しはファンという「存在」を気に留めてくれると嬉しいな。

 ぜんぜんまとまってないけどなんだかすごくすっきりした。

推しくんカレイベ終わったらしばらく実家にいるのかな。ゆっくり休んでね。ステフェス楽しみにしてるね~!

 

*1:芸能事務所に許可を得て、個人が設立しているファンサイトのこと。ファンクラブとは別物で有志で成り立つ。すべてのペンカフェが芸能事務所の許可を得る訳ではないが、規模が大きくなると公式として認められる事がよくある。